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「ブラックマシンミュージック」(野田努・著)を読んで感じた音楽のルーツを知る大切さ

公開日: : 最終更新日:2016/05/06 , 音楽 ,

 

去年の5月に書こうと思っててようやく書けた…
「ブラックマシンミュージック」という良著と出会いました。80年代、シカゴやデトロイトで何が起きていたのか?掲載されていた言葉を拾って振り返ってみました。
 
blackmachinemusic




  

シカゴとデトロイトで起きたムーブメントの回顧録

内容は60年代後半から90年代にかけてのアメリカのDJカルチャーの歴史を時系列で解説していくというもの。その中でも本のタイトルにも表われているようにデトロイトテクノの成り立ちの部分にフォーカスしているのが特徴。驚くべきは当時の関係者の証言の多さ。これには脱帽。当時の光景や人々がどんな想いを抱いていたかがイメージできました。1~2章でデトロイトテクノのムーブメントが起きるきっかけとなるDJカルチャー誕生やシカゴハウスの経緯についても触れているので、歴史のつながりが理解しやすかったのだと思います。
 
このあたりの流れは、良著「Love Saves the Day」やドキュメンタリー映画「MAESTRO」、「THE UNUSUAL SUSPECTS」を合わせてチェックしておくと、より理解ができるのでオススメです。
 

 

印象に残った言葉たち

この本の最もすばらしいところは、当時のシーンを築き上げた先人たちの証言を多く掲載しているところ。
中でも読んで響いた言葉たちを挙げてみます。
 

そう、<ウェアハウス>は教会だった。~中略~ キッズで溢れかえったクラブにいて誰ひとり知り合いがいないのに、しかしその全員を知っているような感じというか。それまでのパーティ人生のなかでこれ以上ないってくらいの途方もないフィーリングを想像してみて欲しい。

シェ・ダミエ

シカゴの伝説的クラブ「ウェアハウス」において、フランキーナックルズのプレイで踊りに来たダンサー達の様子を回想したシェダミエの言葉。

僕もクラブに行くときはもっぱら一人ですが、この感覚は味わっことがあります。ただ、それが3000人との共感となるとスケールが違いますね。
 
 

聴いたときに何とも言えない感じがした。パーティに行ってダンスするのに最適の気分にしてくれたんだ。踊りたくなるような気分にさせてくれたし、スピリチュアルな気分にさせられて、身体で音楽を感じさせられて。とくにあのイントロの部分のベースのフレーズとシンバルにやられてしまった。まるで赤ちゃんがキャンディーを最初に味わったときの感動みたいなものとでも言うかね

バレット・ダンサー

バレットダンサーが当時を振り返り、車内のラジオから「Can you feel it」を聴いたときに感じた感想。この言葉を聞いてから曲を聴くと、とても共感できます。
 

 
 

わかるだろ?何故おれたちが音楽を作っているのかが。
~中略~
前を見る以外、おれたちにほかに何が残されていたというんだい?

デリック・メイ

自動車産業の繁栄→衰退によって荒廃したデトロイトで育ったデリックメイの言葉。音楽が生活の糧だったのだなと。
 
 

デトロイトの本質は労働者階級にある。ディスコじゃヤワなんだよ。クリントンのファンクこそこの環境に相応しいハードコアだった。テクノのハードさの核になっているのは、ファンクだ。

エディ・フォークス

デトロイトテクノ第一世代の一人であるエディ・フォークスの言葉。デトロイトテクノがハードコアたる所以にはジョージ・クリントンがいるのだということがわかりました。
 

 
 

音楽、そこにいる人間たち、ダンス、雰囲気、サウンドシステム、それは未知のパワーのようなものだった。もう『ワーオ』って、おれはもう、そこで何か掴んだ気がしたんだ。なんて言うのかな、例えば、おまえは何故、音楽を聴く?明日を生きたいと思うからじゃないのか。希望を見出し、ロマンを感じたいからじゃないのか。だとしたら、そういう類のものすべてがそこにあったんだ。

デリック・メイ

すでにDJをしていたデリックメイがパワープラントでフランキーナックルズのプレイを見て大きな影響を受けたというエピソード。多くのレコードを持ち、ミックスの技術もあって、パーティーを主催した経験もすでに持っていた彼が「おれはそのときほどスピリチュアルな体験をしたことはない。」とまで言わせるほどの衝撃だったことがうかがえます。
 

 
 

デトロイトの音楽はある種の祈りのようなものでもあるんだ、アメリカに住んでいる黒人たちのね。

ホアン・アトキンス

アメリカの荒廃した都市ではドラッグを売って生活することは日常であり、銃が身近にあることもまた然り。そんな状況下で生まれた音楽がどんなものであるかをあらわした言葉。
 
 

金や48チャンネルのスタジオが音楽を決めるわけではない。アンダーグラウンドはそういった態度をファックだと言う。おれは4トラックでもいい音楽を作れると思っている。そうさ、ひとがそこから何かを感じる音楽が作れるはずさ

マイク・バンクス

音楽に必要なのは情熱だということを示す言葉。お金をかけたからといっていいものができるわけではないと。
 

 
 

おれたちは今だって、決して理解されているわけではない。デトロイトの音楽に特別なものがあるとしたら、それは旨い料理にありつけなかった者たちの情熱ゆえだよ。
~中略~
ハングリーさはひとを大胆にさせる。他人がどう思うかなんてかまうものか、やってしまえ。デトロイトの音楽の背景にはそんな感情があるんだ。

デリック・メイ

デトロイトテクノがなぜあんなにもハードコアで聴く者の心を揺さぶるのか、その答えがこの言葉にすべて詰まっている気がします。
 

 

音楽はルーツを知ることでより一層愛せる

turntable
デトロイトテクノを聴くと、いつも心がヒリヒリする。背筋が伸びるというか、いい意味で緊張感が高まります(なので、数字をまとめるレポート作成業務時によく聴きます)。
その主な原因は曲調にあると思ってたんですが、この本を読んでデトロイトテクノの成り立ちが大きく影響しているのかなぁと思いました。当時のデトロイトの劣悪な環境の中で、デトロイトテクノを築き上げたビルヴィレ・スリーの3人がラジオDJであるエレクトリファイン・モジョや隣町のシカゴでプレイしていたフランキー・ナックルズ、ロン・ハーディといった偉大なる先人たちの影響を受けたこと、安くキーボードを手に入れられたこと、そして絶望的な日常の中で唯一希望を見い出せたものが音楽であったこと。
これらの事象が絡み合ってデトロイトテクノは生まれたのだと知ることで、より一層この音楽が好きになりました。
 
膨大な取材資料を編集し、自らデトロイトに行ってインタビューも敢行した著者の野田さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。この本のすごさって歴史を時系列に整理しながら体系立てて関係者の証言を交えながら出来事を述べているところだと思います。資料を集めていざ編集に入ろうとしたときの道のりの長さを考えると想像を絶します。。それでも、なかなか知られていないデトロイトのアンダーグラウンドカルチャーを世の中に伝えたい、そして取材に協力してくれた方々の想いに応えたいという情熱が著者を駆り立てたんだろうなと勝手に妄想しました。
 
一部レビューでは「デトロイトテクノ=テクノのルーツではないのにこの本は間違った歴史観を植え付けている」とか「著者は黒人偏重だ」といった意見もあるようです。このように言われる要因は、収録されている数々の証言が当時のデトロイトを体験しているデトロイトテクノのオリジネーター(黒人)のものが多いためだと思う。数々の証言の中には誇張されたものもあるかもしれない。が、自動車産業で隆盛を極めていたデトロイトが70年代以降、ビッグ3の失速に伴い財政難→犯罪率上昇→「全米で最も危険な都市」となったことは周知の事実なので、彼らが述べている荒んだ環境と当時の実際の状況とに乖離はそれほどないと思います。
 
個人的には、誰が最初にテクノという音楽を発明したかとかクラフトワークをパクったかどうかなんてのはどうでもいいと思っています。音楽なんてパクって(真似て)発展してきたものだし、デトロイトテクノがYMOやクラフトワークより後発だとしても(実際、ホアンアトキンスやデリックメイも彼らを聴いて影響を受けているという発言もしている)、あのヒリヒリ感はデトロイトのバックグラウンドがなければ生まれなかったはず。
 

 
 
知人に借りて読んだのですが、子どもたちにも語り継いでいきたいので(大げさ?)、買い直して本棚に置いておくことにします。
 
 
おしまい

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