遂に出た。銀杏BOYZの2ndアルバム「光の中に立っていてね」が出た。
前作「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」「DOOR」が出てから9年も経った。
当時学生だった僕は所帯持ちのアラサーになった。
事実上、銀杏BOYZの最後の作品となるこのアルバムを聴きながら、このバンドと峯田のことを考えてみた。
ゴイステを大合唱した17歳
初めてGOING STEADYを知ったのは、高校2年生の時。「東京少年」のPVがスペースシャワーTVで流れてた。
その時は当時数々出てきていたやかましい青春パンクバンドの一つくらいにしか思わず、ミッシェルとブランキーが大好きだった僕は気にも留めなかった。
曲をしっかり聴いたのは3年生になってから。カラオケに行ったら仲間が唄っていたのを聴いて覚えた。
ただやかましいだけじゃないと思った。頭の中でメロディがリピートしていた。「BABY BABY」という曲だった。
友達に「さくらの唄」を借りて聴いた。
どの曲もアツくてクサかったけど、ヘビロテして聴いていた。
すっかりファンになったその冬、バンドの解散が発表された。ちょっと驚いたけどそんなにショックはなかった。思い入れの期間が短かったからだと思う。卒業式が終わった後のクラス仲間とのカラオケでは、野郎どもで肩を組みながら「童貞ソー・ヤング」を熱唱した。忘れられない思い出になった。
初めてライブを目撃した20歳
僕が大学に進むと、峯田は銀杏BOYZとして活動を始めた。2年の時に2枚のアルバムを聴いた。
多くカバーされていたゴイステ時代の曲はほとんどゴイステのver.の方が好きだったけど、ゴイステ時代よりもむちゃくちゃで一方で繊細さも持ち合わせた曲たちはとても気に入ってよく聴いていた。
3年の時、毎年参加していたライジングサンロックフェスで初めて銀杏BOYZのライブを観た。パフォーマンスは音源がかわいく思えるくらいはちゃめちゃ。村井、アビちゃん、チンくんは何かが憑依したみたいに演奏していて、峯田はステージのセットをよじ登ったり、ステージ下に降りて右に左に走り回っていた。そんなパフォーマンスに応えるべく、オーディエンスも異常なテンションでモッシュをし、ダイブをし、大声で叫んでいた。
そんなロデオみたいなライブだったけど、一番強烈に記憶に残っているのは最後に演奏された「東京」。
それまでの荒々しさとは打って変わって、じっくり聴かせる4人に見とれていたらこみ上げてくるものがあって、間奏でのチンくんのギターソロでそれは涙になって溢れ出た。あのときの感覚は忘れられない。
その後も何回か彼らのライブは見たけど、この初めて観たときの「東京」がハイライトだった。
9年振りの新譜を聴いた29歳
それから今回アルバムが発売されるまでの間に、僕は社会人になって、結婚をして、父親になった。
この9年の間にも、思い出してたまにアルバムを引っ張り出して聴いたり、フェスで観たり、結婚式ではバンドで「BABY BABY」をコピーしたりもした。それでも僕にとって銀杏BOYZは過去のものになっていた。
レコーディングに入ったという情報は再三入ってこれど、終了したという情報は一向に入ってこなかった。もう無理なんだと思った。
それが去年の9月になって、更新が滞っていた峯田のブログが更新されて事態が急展開した。
夏が終わる夜|峯田和伸の★がぶがぶDIEアリー
レコーディングが終了したことをほのめかす内容。真相は11月に明らかになった。悲しいニュースとともに。
銀杏BOYZ、安孫子真哉とチン中村がバンド脱退|ナタリー
ライブの時、峯田の両サイドで暴れ回っていた2人の脱退は自分の知っている銀杏BOYZの終わりを意味していた。
本当はもっと上手いのにめちゃくちゃにベースを弾くあびちゃんを見るのが好きだったし、小さな体で目一杯ギターを掻き鳴らして時折グッとくるフレーズを弾くチンくんが好きだった。
続けざまに12月には村井の脱退がアナウンスされた。
銀杏BOYZから村井守脱退、バンドは存続|ナタリー
峯田は一人でも銀杏BOYZを続けていくと言うけれど、今回のアルバムが事実上のラストアルバムだと悟った。発売日が待ち遠しい半面ちょっと怖くなった。
2枚の新譜を聴いて
そして発売日に「光の中に立っていてね」とライブアルバム「BEACH」を買った。
「光の中に〜」は事前にレビューでチンくんが何重にもギターの音を重ねてミックスしたことを知っていたので、アルバム全体もノイジーで荒々しい作風になっていると思っていた。
聴いてみると、グシャグシャになっていると思っていた曲は思っていたほどノイジーではなく、むしろ終盤に進むにつれ峯田の持つノスタルジックな世界が広がっていった。
特に⑥「新訳・銀河鉄道の夜」以降は、11年前にファンになったときのあの感じを思い出させてくれた。⑦の「光」、大好きなボ・ガンボスDr.kyOnのピアノが前面に出たアレンジになっていてグッとくる。そこから⑧「ボーイズ・オン・ザ・ラン」が疾走する流れ、拳をグッと握りたくなるあの感じ。大好きな銀杏の音だった。
「BEACH」はただのライブアルバムではなく、ライブの歓声やノイズを加工したライブ音源。初めて聴いた時は、なんでノイズをわざわざ強めるのか、せっかくのライブ音源を聴き取りづらくするのかと苛ついた。
でも2回目聴いた時にライブに行った時になる耳鳴りをしていることに気づき、思った。これはライブの空気を閉じ込めた作品なんだと。そう思えた瞬間、耳障りだったノイズが心地よくなった。頭の中では過去に観た、4人が全力でパフォーマンスする姿を思い出していた。過去の懐かしい曲たちが当時の熱気そのままに蘇ってきた。
9年経っても変わらない銀杏BOYZがそこにいたし、聴いている僕も変わらずに胸ときめいてた。
ただ、今回のリリースに至るまでに3人が脱退したことを踏まえると、3〜4年前のライブの4人のテンション(「BEACH」の音源)→「光の中に〜」のアレンジという流れ、バンドとしての飽和点はとっくに超えてたんだろうと思った。
銀杏のパフォーマンスを一度でも見たことがある人なら、あれが5年後も10年後も変わらずにやっていることは想像ができないと思う。それだけ身を削ってエネルギーを放っているということ。バンドを続けていくためには変わる必要があったんだと思う。
↑こんなことを思って峯田のインタビュー記事を読んだ。
銀杏BOYZの世界/銀杏BOYZと世界、のその後 ― 銀杏BOYZ(峯田和伸)インタヴュー|ele-king
峯田はバンドを壊さないために続けていくために新しい要素(記事で述べている“打ち込み”)を取り入れようとしていた。
でも、現実として3人が脱退した。僕が好きだった4人の銀杏BOYZは終わった。
少し悲しいけど、よかったとも思う。
僕にとってこのバンドはむちゃくちゃなライブバンドだったから。
今回のアルバムは気に入っているけど、これらの曲をライブで演奏する際、PCを前に立つあびちゃんやチンくん、ヘッドホンしながら叩く村井、4人の音以外の音が入ってくるのなんて想像ができないし、見たくなかったから。
4人を生で観れて本当によかった。大切な過去の想い出として胸にしまっておくことにする。
峯田は今後も銀杏BOYZを続けると言っている。
銀杏BOYZのボーカル峯田和伸、1万字インタビュー|朝日新聞デジタル
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インタビューの中で、こう言っている。
青春が終わったっていう気がしますね。普通の人では味わえないぐらい長く、青春を過ごせた。これからは音楽が始まるな、という気がしますね。やっと。
引用元:朝日新聞デジタル
読んで、これからを楽しみにしている自分とやっぱりちょっと寂しさを感じる自分がいる。
今後は、新たにメンバーを集めて、曲を出して、ライブをするとのこと。
それを銀杏BOYZとして見れるかは別として、峯田の唄がまた聴けるのはとても嬉しい。
今までありがとう。これからもよろしく。
おしまい