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「バンクーバーの朝日」を見て感じた野球のシーンと編集のこと

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映画新年一発目は去年の夏くらいから気になっていた「バンクーバーの朝日」を鑑賞。
 
vancouver

意外にも初めて観た石井作品。うん、おもしろかった。おもしろかったけど2.8(5段階)くらいでした。ただ、色々と感じることがあったのでそのレビューを。




  

戦前に実在したカナダの日本人野球チームの話


 
監督、役者も素晴らしかったんですが、この映画は何より美術が素晴らしかったです。舞台セットは日本に作ったそうですが、当時っぽさがすごく出ていました。
 
一番目がいったのは野球グローブ。これがとてもよくできていました。沢村栄治やスタルヒンの写真で見たことのある今より形がいびつで使いずらそうな形、そしてグローブのポケットがなく捕りづらそうな感じもしっかり出ていました。(妻夫木聡が怪我したのもうなずけます)
 
 

野球経験者として観た野球シーンの感想

Vintage baseball, bat and glove isolated on white
野球の話なので野球のシーンはけっこうありました。総じて良かったですが中でも良かったのは以下3つ。
 
・池松壮亮の打つ構え
なんでも高校までやっていたみたいで。だからかとても構えが自然体。なにより左ってところがカッコよかったです。打席で一番映えてました。
 
・妻夫木のリード→盗塁
出塁した後の妻夫木をアップでずっとカメラが追ってたんですが、とても臨場感が伝わってきました。石井監督曰く「本人は芝居をしようとしていないんじゃないか」と述べていますが、たしかに無我夢中という感じが伝わってきます。リードされている状況で(反撃できる見込みは少ない)牽制球を気にしながら次の塁を盗りにいく、野球経験者なら味わったことのあるあの一瞬も気の抜けないハラハラ感がよく出ていたと思います。監督があの顔を撮りたかったというのもわかる気がします。
参照:『バンクーバーの朝日』石井監督×妻夫木聡、「この映画は表情がすべて」
 
・妻夫木と亀梨のバント研究
セーフティバントがカナダ人に対して有効だとわかり、二人は夜の素振り時にバントをより追求しようとします。バントの構え、構えに切り替えるタイミング、バントした後の動き方。そんな中でバントした後に踏み出す足を右足にしたらいいか左足にしたらいいかを話して試すシーンがすごくよかったです。学生時代にチームメイトと同じようなことをしていたのを思い出しました。
参照:『バンクーバーの朝日』妻夫木聡&勝地涼&池松壮亮 単独インタビュー - シネマトゥデイ
 
 
 

背景説明とフォーカス、編集の難しさ

"説明しないと伝わらない、でも説明が入りすぎるとフォーカスしきれない、よって響かない”
 
今回の映画を観て、上記のことを強く感じました。
内容って見る人によって評価は異なるもの。十人十色。
様々なタイプの人が見ても“それなりに”楽しめるようになっていたと思います。
 
僕は野球に惹かれて観たクチなので、もっと野球にフォーカスしてほしかったです。
バントの工夫点や相手バッターのデータを採って弱点のコースを攻める、守備陣形を変えるといった戦術の経緯など。そういったシーンが全くなかったわけではありませんが、もっと詳しく描いて朝日軍がどのように勝てるようになったかを伝えてほしかったです。
 
ただ、そうしてしまうと時代背景だったり登場人物たちの心理描写を伝えられなくなってしまう可能性があります。
じゃあ全部入れたいものを入れればいいかというと尺が長くなってしまう。
2時間の枠の中ではどうしたって取捨選択を迫られる。このあたり石井監督は悩まなかったのか聞いてみたいものです。
 
 

てなわけで、めちゃめちゃおもしろかったとは思いませんでしたが、野球のシーンであったり、美術の素晴らしさであったり、役者の名演技であったり見所は随所にあるので映画館で観る価値はギリありかなと。
 
バンクーバーの朝日オフィシャルサイト
 
 
石井作品、次は「川の底からこんにちわ」、「ぼくたちの家族」あたりを観ようかな。
と、その前にハードディスクに眠っている「舟を編む」が先かな。
 

 
 
おしまい

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