「新幹線お掃除の天使たち」(遠藤功・著)レビュー

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なんたって読書の秋ですよ。

今まで、
Amazonでポチる→届く→本棚に並べる→満足する

という悪循環を打破すべく、読めるときに読もうと思います。

今回、紹介するのは1ヶ月ちょっと前にとあるツイートを読んで即ポチした
新幹線の清掃スタッフのお話です。




  

概要

駅のホームに入ってくる新幹線に整列して一礼し、駅に停車中の短い時間で
社内を素早く清掃し、出発時にはまた整列して一礼して見送るお掃除部隊、鉄道整備会社、通称“テッセイ”の社員たちがどのように生まれたか、またその仕事でのエピソードを紹介しています。
国内だけではなく、海外からも注目されるようになったこの最強チームが生まれた背景には、組織の意識を根底から改革することに心血を注いだ一人の取締役と乗客を快く送り出したいという現場スタッフの想いがありました。

 

感心したこと

冒頭に出てくるスタッフさんは最初、テッセイにパートで入ることが決まった時に家族から嫌がられ、自分自身も後ろめたさを感じていたそうです。
それがテッセイが革新していき、「お掃除の天使たち」として有名になっていくなかで仕事に対してのプライドが芽生えていったそうです。
「私はこの会社に入るとき、プライドを捨てました。
でも、この会社に入って、新しいプライドを得たんです」

本人のこの言葉が物語っています。
このエピソードを読んで、職業によって印象や偏見はあるけど、働く人の気概とやりよう次第で人の役に立つどんな仕事でもやりがいや誇りを持てるんだなと思いました。

また、テッセイの改革の立役者である現専務取締役の矢部さんが赴任当初に取り組んだ、清掃スタッフの休憩所にエアコンを設置するというエピソードも印象的でした。それまで何度現場から要望をあげても通らなかったことが、上層部側からの働きかけで実現したんだから、スタッフは大喜びですよね。総額800万円かけてでも行ったこの取り組みが革新のくさびになっていました。
このエピソードを読んで“欲すればまず与えよ”だなと改めて思いました。

 

感想

前半は清掃チームの清掃にとどまらない取組のすばらしさ(いい話)、
後半はそんな清掃チームがどのような経緯で産まれたのか(組織論)、
というはっきりした構成が読みやすかったです。
前半部分だけだったら、正直「へ~」というくらいの印象ですが、後半部分があることで前半部分のエピソードの背景を知ることができ、よりエピソードに説得力が増した印象を受けました。

読む人によっては、
「“お客様のために、お客様のために、” というチームの理念の強さがちょっと怖い」
と感じる方もいるようです。
たしかにわかる気もします。実際、強迫観念化しているケースもありますしね。
そこで大事になってくるのは主体性があるかどうかだと思います。
なんだって“やらされ”でやっていれば、中身が伴ってきません。
上記の理念を
“自分がお客様のために役に立ちたい、喜んでもらいたい、それで自分も喜びたい”と
思えることが大事だなと思います。
テッセイを築き上げた当時の清掃チームのリーダーたちからはその想いを感じました。

また、仕事は自分がおもしろいと思えるかどうかでモチベーションが大きく変わってくるとも
改めて思いました。
新幹線を整列して一礼して送迎することや、季節に合わせて服装をコスプレすることも、お客さんに喜んでもらいたいという想いと同時に、これやったらおもしろいとか自分たちが楽しいという想いもあったんじゃないかぁと。
自分たちが楽しめてイキイキしていないと、見てる人やもてなす人を楽しませる・喜ばせることはできないですよね。

と、仕事観について青臭く考えるきっかけになる本でした。
PS.本のパッケージや色使いやフォントが優しい感じで統一されていてステキでした。

 
おしまい

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